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Vol.2 〜検定で行っている評価〜

第2回 クリティークシート(評価表)には、なにが書かれているのでしょうか?

 前回は、検定講座では検定を受ける意義について書かせていただきました。「今の自分のトールペイント力を知り、次に何を学んでいけばよいのかを知るために」・・・そんなふうにとらえて、毎年受けることで、物差しのようにご自身の成長をはかってみてはいかがでしょうか。
 その中で、「この検定には其々の力を評価する、クリティークシートが付いています。これがとても大事なのです。」とお話ししたのですが、今回はこのクリティークシートで何を評価しているのかを、少しご説明しようと思います。
 クリティークシートは、作品の評価をしていく、とても大事な基準です。スティルライフ・フローラルカテゴリーとストロークカテゴリーでは、基準が少し違います。なぜなら、良い作品を描くために重要視される部分が違うからです。其々に、いくつかの評価する項目が有ります。その全ての総合評価で、点数が決まります。
 では先ず、スティルライフ、フローラル、ストローク全ての作品にとって一番大事な評価は、何でしょう?「きちんとデザインを解釈をして、印象の良い作品に仕上がっているかどうか」これが最も重要視されます。つまり、絵を描くにあたり、二スも、ブレンドも、色彩論ももちろん大事なのですが、なによりも、絵として魅力が有るかどうか、という事を最も重んじているのです。これが、この検定の素晴らしいところであり、ずっと長い間、続いてきた底力なのだと思います。
 勉強中の方によく起こりがちなのですが、試験という事で、少し硬くなってしまい、失敗しないようにと、色をおそるおそる置いて、無難で面白味のない絵になってしまっていることがあります。これでは、良い印象を与える魅力的な絵とは言えませんね。多少難が有っても、大胆に、生き生きと、楽しそうに描かれた絵は、自分の部屋に飾ってずっと眺めていたくなりませんか?これは、決して色彩論や技術を否定している訳ではありません。きれいな二ス、なめらかなブレンド、色彩論をよく理解したうえできちんとコントロールされた色を使う事で、魅力的な絵が生まれるのです。
 では、魅力的な、良い印象を与える絵を描くにはどうしたら良いのでしょう。そのよりどころとなるのが、クリティークシートの総合評価の下に続く、それぞれの項目なのです。この一つ一つを学び、きちんと理解し、表現できるようになることが、次第にバランスのとれた、ハーモニーをかもしだす、魅力的な作品づくりへの手助けとなるでしょう。スティルライフ・フローラルカテゴリーで、よい印象の作品として評価される際に、最も重要なのが「主題が効果的に確立されている」という事です。主題とは、よく、フォーカルエリア、とか、センターオブイントレストと呼ばれます。聞いたことが有りますか?絵の中で、最初に目が行く部分のことです。このポイントが散漫では、この絵はいったいどこが一番大事で、どこから見始めたらよいかわかりませんよね。また、ある一部分だけが、よく描かれていて、他の部分はいい加減だったら、視線がそこで止まってしまい、やはり絵全体の良い印象が得られませんね。良い印象を得るためには、主題が確立されていなければなりません。そして、この「フォーカルエリアを効果的に確立する」ために必要なのが、色彩論に基づく色のコントロールなのです。
 もちろん天賦の才能の持ち主で、感性だけで描けてしまう方もいらっしゃるかもしれません。でも、天才ではない普通の私たちは、この便利な体系だった理論を学ぶことで、もっと簡単に色のことが分かるようになります。中学や、高校の美術の授業で学んだ、色の勉強を思い出してみてください。色の3 要素「色相」「明度」「彩度」。まさに、この3 つがきちんと理解、認識できていて、適切にコントロールされ、具体的に作品の上で、表現されれば、フォーカルエリアが確立します。この3 要素の理解度もまた、クリティークシートのそれぞれの項目で評価されていきます。
 さて、検定というと、どうしてもこの3要素の勉強に注目が置かれがちです。確かに奥が深く、学んでいくのにも時間がかかるため、この部分の完成度が高いと作品の評価が高くなります。しかし、実は、この項目が厳しい評価で重要視されるのは、1 級受験者のみなのです。もちろん2 級、3 級受験者も勉強の進み具合が問われます。しかし、勉強して、知識として理解することと、色が見極められて確実に表現できることは違います。1 級では、確実に表現するための色を、選べる力が評価されますが、2 級では、まだ確実には表現しきれなくても、勉強して試みようとしている跡が見受けられる事で評価されます。そして、3 級は、勉強の入り口に立つ初心者のための級です。何も知らなかった昨日から、色を学んで表現しようと試み始めた明日へ、一歩を踏み出したかどうかを絵から見てとれることで、評価されるのです。
 そういったことを踏まえて、色彩論の勉強と表現の前に、全ての級に要求される、重要な評価が、技術点です。「きれいにブレンドができているか」「ラインワークや細かいところの処理が上手にできているか」「背景やフレームが絵と合っているか」「二スがきちんとぬられているか」これらは、トールペイントを始めた方が、最初に習う基本的な技術です。決して特殊なことではありません。そして、練習を積み重ねれば、どなたでもマスターできます。練習といっても決して苦しい修行ではありません。いつも楽しく描くトールペイントの作品を、ちょっとだけ細かいところまで気をつけて、きれいに仕上げてみましょう。せっかく描いた作品もきれいな仕上がりのほうが、飾っておいても気持ちが良いでしょう?
 技術を評価する項目は、すべての級で重んじられます。3 級受験者の作品はこれらの技術が優れていると、高い評価が得られます。2 級1 級受験者は、この部分は、3 級で合格してきたのですから、きちんとできているということが前提となります。
 次に、ストロークカテゴリーのスティルライフ・フローラルと違う点を見てみましょう。
 ストロークカテゴリーにおいて、最も大事なのは、「ストロークを上手にコントロールして描いているか」「ラインワークを上手にコントロールして描いているか」ということです。この技術が最も高く評価されます。
 必ずしも「主題が確立されている」必要はありません。ただし、もし主題となる部分を作った場合は、きちんと確立されているかどうかが評価対象となります。
「 色「」彩度「」明度」の評価は、「流れ」で表現します。デザインの中に流れができているかどうかが、大事なポイントとなります。
 ストロークカテゴリーでも、ブレンディング技術が評価されます。しかし、ストロークの部分は、絶対にブレンドしてはいけません。大きな形の中で、ブレンド力を見せてください。もちろんこのブレンドは、サイドロードや、ブロッキングのみならず、ストロークを重ねたり、並べて、少しずつずらして作るブレンドなど、伝統的な其々のストロークスタイルのブレンドの技法、どんな方法でも評価されます。
 クリティークシートに書かれている細かい評価を全てここで、ご説明することはできません。それは一人ひとり違うからです。このシートの詳しい解釈、それに沿ってどのように勉強をしていったらよいのかは、是非、検定を受けて、カンファレンスという解説の面談にいらしてください。そこで毎年、ご希望の方お一人お一人に、ご説明をしています。この面談を通して、「より深く理解することができました」というお声をいただき、いつもとても嬉しく思っております。

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山崎裕子プロフィール:
イラストレータとして広告・出版の仕事に携わる。
2003 年ゴールドアーティストに認定。翌年よりシェリー先生・ペギー先生・キャロル先生から研修を受ける。2007 年MDAに認定。NTP(現JCA) トールペインティング技能検定の審査員として活動する。2009 年SDP のサティフィケーション審査員を務める。その他コンテスト多数受賞。現在トールペイントにまつわるブログを掲載中。
http://ameblo.jp/atelier-ys1/

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